• Takanabe Ear . Nose & Throat Clinic

日帰り手術

慢性中耳炎の手術

鼓膜に穴の開いた状態が続くため、耳だれが反復したり、聞こえが悪くなったりします。耳だれ防止、聴力改善のために手術を行いますが、治療方法は様々です。鼓膜の穴のサイズや炎症の程度、患者さんの年齢などにより、手術方針を決定します。穿孔サイズが小さい場合は、人工材料を使用することが可能です。そのためどこも切らずに穴を塞ぐことが可能です。

[手術方法]
・鼓室形成術(約60分)…耳介後部を切開しますが、成功率95%と非常に高い手術です。
・鼓膜形成術(約30分)…小さく耳の皮下組織を採取し、鼓膜の穿孔を閉鎖します。
・鼓膜穿孔閉鎖術(約10分)…リティンパやテルダーメスといった人工材料を使って鼓膜の穿孔を閉鎖します。鼓膜形成術は、聞こえを良くする、あるいは中耳を炎症からまもる目的で、鼓膜の穴をふさぐ手術です。

最もよく行っている鼓膜穿孔閉鎖術の実際

 耳の中に麻酔液を浸した小さな綿を2-3個入れ、その後ガーゼを入れて鼓膜と外耳道の麻酔をします。次に鼓膜の穴のまわりをぐるりと切除して出血させて新鮮な創面を作成して、リティンパあるいはテルダーメスといった人工材料で穴をふさいで手術を終えます。
 手術時の出血は極めて少量で、痛みも軽度です。

手術後について

 術後約2週間は激しい運動を避ける、強く鼻をかまない、などの注意が必要です。
 穴をおおった人工材料を介して鼓膜の再生が数カ月かけて行われます。ここで感染が起こると再び穴が開いてしまうので注意が必要です。傷口が落ち着くまでは飲み薬や点耳薬を使いながら外来で経過を見させていただきます。丈夫な鼓膜の再生が確認できれば、その後の通院は必要ありません。まれに再び鼓膜穿孔が生じる場合があります。

滲出性中耳炎の手術

 鼓膜の奥に滲出液がたまる中耳炎です。通常、内服治療や鼓膜穿刺(水抜き)、鼓膜切開で治療を行いますが、反復性、難治性の場合は鼓膜にチューブを留置します。チューブを留置すると、中耳腔の滲出液が耳管から排出されやすくなり、換気された中耳腔を維持できます。

[手術方法]
・鼓膜チューブ留置術(約10分)

 鼓膜喚気用の換気チューブは、シリコン製の小さな中空のチューブで、鼓膜を小さく切開してそこに留置します。チューブによって中耳と外界が等しい圧力に保たれます。反復性の耳の感染症(急性中耳炎)や中耳に慢性的に体液がたまる状態(滲出性中耳炎)の子供には、この治療法が適しています。

アレルギー性鼻炎の手術

 アレルギー性鼻炎は通常、内服薬や点鼻薬で治療します。しかし重度の鼻症状でお困りの方や内服治療を続けたくない方は手術の選択が可能です。術式は鼻粘膜表面をレーザーで焼灼する方法や原因神経を切断する手術などがあります。

[手術方法]
・レーザー焼灼術(約15分)…鼻粘膜表面をレーザーで償却することで、一定期間症状を起こしにくくする効果があります。
・後鼻神経切断術(約30分)…原因神経を切断することで、過敏な反応を抑え、くしゃみや鼻水の症状を改善します。

1.準備
 麻酔液がついたガーゼを鼻の中に入れます。麻酔液は苦く、少々不快かもしれません。唇や鼻の周りが多少しびれます。飲んでも大丈夫ですが、口の中にためておいて後で吐き出してください。

2.レーザー照射
 実際のレーザー治療は原則として両側を続けて行います。目をレーザーから保護するためにメガネをかけていただきます。レーザー照射中少々熱かったり、軽い痛みを感じることがありますが、当院では小学校高学年の方から施行しています。

3.レーザー治療後
 レーザー治療した後、通常のお仕事、運動は制限ありません。レーザー治療した後、約1週間はアレルギー症状が一時的に悪くなることがありますが、その後かさぶたが取れるころには鼻づまりも良くなります。

★レーザー治療は原則1回です。1回のレーザー治療で効果が不十分な場合は、その後は隔月に1回位で2、3回の追加照射をおこないます。レーザー照射の治療効果は、永続的に続くものではありません。効果の持続期間も人によって様々です。平均すると効果の持続時間は2年です。しかし、薬の量は確実に減らすことができます。効果が減少した時点で、安全に、副作用無く、レーザー照射を繰り返すことも出来ます。

慢性副鼻腔炎の手術

 保存療法で充分な効果が得られない、または再発を繰り返す場合に内視鏡下鼻副鼻腔手術が検討されます。内視鏡で負担の少ない手術が可能です。

内視鏡下鼻副鼻腔手術とは

 内視鏡下鼻副鼻腔手術は、鼻の穴に内視鏡を挿入し、TVモニター画面を見ながら鼻内手術をおこなう方法です。
 従来の唇の下から切開する方法とは異なり、切除する範囲は、病気を改善させるために最低限必要な部位のみです。さまざまな角度から副鼻腔を観察でき、また、TVモニター画面で拡大されるため、術中術後の出血や痛みが、従来の鼻根本手術よりも、はるかに少なく、また、頬の腫れやしびれを生じません。
 鼻のそばにある眼や脳といった危険部位を傷つけないよう、安全を確認しながら手術をおこないます。

1)内視鏡下鼻副鼻腔手術の麻酔
 麻酔は、鼻内に麻酔ガーゼを留置し、手術直前に痛み止めの注射を追加します。止血のためのお薬も入っていますので、注射後多少どきどきすることがあります。

2)手術時間
 手術時間は、片側30分-60分程度です。鼻中隔湾曲矯正術を併用する場合は、これに20-30分が加わります。
 出血が多い場合にはこれよりもさらに時間がかかることがあります。
 十分な麻酔液を注射しても痛みが強い場合、または、出血が多い場合には途中で中止することがあります。

3)手術後の経過
 手術当日約1時間、ベッド上での安静が必要です。
 当日は飲酒、入浴はおやめください。 ガーゼを抜いた日も、出血しやすいため半日安静が必要です。 その他は、通常の生活をおこなっていただいて結構です。 術後の鼻の痛みは軽度です。ただし、両方の鼻にガーゼが入っている間は、口呼吸をせねばならなくなるため、のどの渇きや痛みを少々生じます。
 手術後、1~2週間は汚れがたまりやすいため、頻回の清掃治療が必要です。内服薬は、1~2ヶ月を目安に服用していただきます。
 手術後も、ポリープが再発しやすいため、定期的に診察を受けてください。
 皆様に安心して御自宅で御静養いただくため、また、手術後トラブルを未然に防ぐため、手術後は24時間体制で対応させていただきます。

鼻づまりの手術

 通常はまず鼻づまりなどの症状を抑える薬の処方などを行います。使われるのは抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬、抗炎症薬、抗生物質などで、症状に合わせて処方します。ただし、粘膜の血管を収縮させる点鼻薬は粘膜が分厚くなって慢性肥厚性鼻炎を起こすリスクがあるため慎重に処方しています。また、鼻吸引や鼻洗浄などの処置やネブライザー療法なども行います。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を合併している場合には、こうした治療によって改善効果を得られることもあります。歪みが大きく、保存療法では十分な効果が得られない場合には根本的な治療として手術を検討します。鼻中隔矯正術、粘膜下下甲介骨切除術の手術では従来は約1週間の入院が必要とされていました。しかし、内視鏡やサージトロンなどの手術支援機器の開発、診断・治療技術の進歩により、限られた症例では日帰り手術が可能となりました。
 鼻中隔は鼻の穴の間にある仕切りのことで、左右どちらかに曲がっていることが普通です。しかし、弯曲の具合が大きく、それが原因で鼻づまりや鼻血などの症状が出る場合があります。鼻中隔弯曲を矯正することで症状を改善します。

[手術方法]
・鼻中隔矯正術(約30分)…曲がっている部分の鼻中隔軟骨を切除し、まっすぐな部分だけに整えて戻す手術です。


  2つある鼻の穴を中央で隔てているのが鼻中隔です。鼻中隔が歪んで鼻腔を通る空気の流れが滞るのが鼻中隔弯曲症です。鼻中隔は軟骨と骨でできていて、程度の差がありますがほとんどの方が歪んでいます。症状がなければ、鼻中隔が歪んでいても問題ありません。ただし、外側から見て鼻筋がまっすぐでも内側で大きく歪んでいるなど見た目では判断できないこともよくあります。鼻詰まりなどの症状が起こりやすい場合は受診をおすすめします。
 鼻中隔は軟骨と、鼻中隔軟骨・篩骨正中板・鋤骨という骨で構成されています。成長により鼻中隔の軟骨と骨も発達しますが、それぞれ成長スピードが違っていてバランスが崩れると歪みを起こします。成長途中にある子どもには鼻中隔の歪みがまだ起こっていないことが多く、子どもの鼻中隔弯曲症はほとんどありません。
 鼻中隔矯正術は歪んだ鼻中隔を手術で整える根本的な治療法です。成長途中には骨などの成長に悪影響を与える可能性があるため、19歳以上の方が対象となります。手術は局所麻酔で行うことができ、顔や口内の切開はなく、内視鏡による鼻腔内の手術です。侵襲が少ないため、当院では日帰り手術で受けることができます。
 実際の手術は、局所麻酔を行って鼻の穴から内視鏡を挿入して行います。歪んでいる鼻中隔の粘膜を切開し、軟骨の一部を切り取ります。鼻中隔をまっすぐに整えて軟骨を補強し、切開した粘膜を修復します。最後に感染防止のために抗菌剤を用いた処置を行って手術は終了です。構造そのものを矯正し修復するため、根本的な治療となります。
 鼻中隔弯曲症に、肥厚性鼻炎を合併している場合、鼻中隔矯正術だけでは十分な効果が得られない可能性があります。その場合には、粘膜下下鼻甲介手術を同時に行います。下鼻甲介の粘膜の一部を切除するか、粘膜を切開して下甲介骨を取り除くことで、肥厚が解消され、高い効果を得られます。

耳瘻孔の手術

 耳の前に小さな穴があり、炎症を繰り返す場合が適応です。まずピオクタニンという青い色素液を注入して穴の内腔を青く染色します。それから、局所麻酔薬を穴の周りに浸潤注射してから穴の周囲を切開し、中の青く染色された部分を皮膚組織とともに取り除きます。

舌小帯短縮症の手術

 舌小帯短縮症は、舌の裏側にある膜状の組織が舌の先から歯茎に伸びているために舌の動きが制限される先天性の異常です。
 乳児では舌小帯表面にゼリー状の麻酔薬を塗ってハサミで切開しています。昔のように「チョンと切る」のではなく、舌の根元まで十分に粘膜を切り込むため切開創はダイヤモンド形に広がります。出血はほとんどの場合、約5分間の圧迫で止まります。縫合はしておりせん。幼児では全身麻酔で横に切開し、吸収糸で縦に縫合します。
 術後は再癒着防止のために、指で舌のストレッチ(引き伸ばし)を1日4回、3週間しっかり行って頂きます。1週後に再癒着の有無を診察し、癒着があれば指で剥離します。1か月後の診察で創が治癒していれば治療終了です。
 昔はストレッチを行っていなかったため、再癒着して症状の改善が不十分だった症例があると思われます。